今回は、長年児童学科で教鞭をおとりになっていた児童文化がご専門の中村悦子先生にお勧めの絵本をご紹介していただきました。
悦子先生は昭和9年生まれ、現在、栃木県宇都宮市にお住まいで、現在も児童文学や芸術分野において造詣が深く、お元気にお過ごしです。
わたしは同郷ということで、帰省した際は、悦子先生をお訪ねして、おたがいの関心ごとや、研究や教育の話などをしてまいります。
悦子先生からは「今でも図書館で時折、絵本を何冊か机の上に並べて楽しむことはありますが、
研究的な側面は全くなく、心のおやつのような感覚で読んでおります」とのこと。
「だから立派な紹介は書けませんが、今回のお申し出があった時、
迷わず心に浮かんだ絵本があります。よほど出会って気に入ったのでしょう。
『あめだま』は男の子に一目ぼれ、『うみべのまちで』はじーんと心に染みて覚えていたものです。」
「心のおやつ」のような感覚で、微笑みながら絵本を静かに眺めていらっしゃる悦子先生のお姿が浮かびますね。
そして「コロナの影響で日常生活が大きく変化したわけではないのですが、何か漠とした不安の気配があるような感じです。
思えば、もう半年も展覧会などに行ってなく、テレビの名画や画集では、やはり心の響きは異なります。それでも折に草むしりをしたり、
本よみをしたりと変わりなくすごしています。」というお便りをいただきました。
卒業生の皆さま、久しぶりに悦子先生にご連絡をとってみたくなられたのでは・・・。
では、悦子先生お勧めの絵本をご紹介いたします。
1.「あめだま」 作:ペクヒナ、訳:長谷川 義史 ブロンズ新社(2018)¥1650
・表紙の飴玉をかざしてみる男の子に一目でひきつけられました。
「ぼくはひとりであそぶ」「ひとりであそぶのもわるくない」と言うものの、
どうやら「ぼくをなかまにいれてくれない・・」というのが正直なところ。
その子がビー玉を探してきて「あめ玉」の入った袋にしまう。
「どれから食べようかな?」・・・そして始まるいくつかの出会い。
2.「うみべのまちで」 文:ジョアン・シュウォーツ 絵:シドニー・スミス
訳:いわじょうよしひと ビーエル出版(2017)¥1760
「ぼくのうちから うみがみえる」ここでのぼくたちの遊びと家族の生活。
そして海の下のトンネルで父さんは働いている。「いつかぼくもそこで働く」と。
将来の自分のあり方は、父の働きや近隣との営みからひきついでいくもののようだ。
引き継がれていく営みの豊かさが見える一冊。
絵本はお子さんへの読み聞かせだけではなく、おとなにとっても自分の子ども期の感覚を思いおこさせてくれたり、
いまの心境に寄り添うメッセージをもらったりと、ふーっと力を抜いて絵本に向き合う時間を大切にしたいものですね。
(文責:加藤 奈保美)